箱根・芦ノ湖畔にあり、雄大な富士の姿を望む絶景のロケーションにある山のホテルの庭園。ここは、かつて三菱4代目総帥・岩崎小彌太男爵の別邸でした。

別邸時代には5月上旬にツツジの花が、前後してシャクナゲが美しく咲き誇り庭園を埋め尽くしました。後に「山のホテル」になってからも、ツツジ84種類約3,000株とシャクナゲ42種類約300株は今も大切に受け継がれています。
庭園には、江戸時代に作出された古品種のツツジが保存され、また、日本では最初に導入されたと言われる西洋シャクナゲもあり、相当な樹齢の大株も多く、全国的に見ても第一級の価値がある庭園と認められています。

つつじ・しゃくなげフェアつつじ・しゃくなげフェア

岩崎小彌太男爵は、当時ツツジが咲き誇る別邸庭園で “園遊会”を開いてお客様をおもてなししました。富士山を背景に、赤、ピンク、白と一面に咲くツツジの花・・・一人でも多くの人とこの美しさを分かち合いたいという思いから、“園遊会”は開かれたのでしょう。別邸から「山のホテル」になってからも庭園のツツジは大切に受け継がれ、1965年(昭和40年)頃から毎年5月に「つつじ・しゃくなげフェア」を開催し、男爵のおもてなしのように多くのお客様に楽しんでいただいております。

つつじ・しゃくなげフェア2024 概要つつじ・しゃくなげフェア2023 概要

開催期間 2024年4月下旬〜5月中旬(開花状況により開催期間が変更になる場合がございます。)
庭園見学時間 9:00〜16:30(最終入場)
※開園時間、お昼時、土日祝日は混雑が予想されます。混み合う時間を避けてお越しください。
庭園見学料 1,000円(ツツジ開花中のみ)※小学生以下無料
※皆さまからいただいた入園料は、今後の庭園維持活動に利用させていただきます。
その他

現在の庭園状況

最新の開花状況は、山のホテルのブログでご案内しております。

スタッフブログはこちら
  • ツツジ、シャクナゲに関する小冊子販売ツツジ、シャクナゲに関する小冊子販売

    ツツジ、シャクナゲに関する小冊子表紙イメージ
    2023年のホテル開業75周年、庭園のツツジとシャクナゲが日本植物園協会の「ナショナルコレクション」に認定されたこの機会に、ホテルの代名詞でもあるツツジとシャクナゲの庭園にスポットを当てて制作された冊子です。
    庭園の価値を探る作業を導いてくださった倉重氏をはじめ、品種の増殖にご協力いただいた皆様に御礼申し上げます。これからも私たちはこの貴重な庭園を大切にし、後世に伝えていく努力を続けていきます。
    タイトル 「小田急 山のホテル 庭園のツツジとシャクナゲ」
    発売日 2024年4月上旬
    仕様 B5サイズ/32P/フルカラー
    価格 800円(税込)
    言語 日本語・英語併記

    ※山のホテル本館「売店」及び別館2F「プレミアムショップ ロザージュ」にて販売いたします。
  • 倉重先生講演会倉重先生講演会

    倉重先生講演会
    ツツジ・シャクナゲ研究者で、日本植物園協会専務理事でもある倉重祐二氏を招き、「ナショナルコレクション」に認定された山のホテルの庭園について、ツツジやシャクナゲの奥深い魅力に触れる講演会を開催します。今年は、国枝総支配人とのトークで、庭園の歴史、プロジェクト立ち上げについても話します。
    開催日時 2024年5月7日(火) 11:00~
    場所 山のホテル本館2階 金時
    入場料 無料(先着・定員40名様)
    講師 倉重祐二氏
    申込方法 電話予約 小田急 山のホテル
    TEL:0460-83-6321(9:30~19:30)
    ※定員になり次第終了とさせていただきます。
    ※就学前のお子様の参加はご遠慮ください。

    ※講演会での撮影・録画・録音等は禁止させていただきます。
    ※お席には机がございませんので、予めご了承ください。
    ※講演終了後、講師への質問や相談はご遠慮ください。
    ※状況により、本イベントの中止・内容が変更になる場合がございます。
  • チャペルコンサートチャペルコンサート

    チャペルコンサート
    富士山と芦ノ湖が望める箱根屈指の絶景ポイントである庭園に、中世ヨーロッパの古城の片隅にたたずむ小さな礼拝堂をイメージした独立型チャペル。その大きな扉を湖に向かって開かれ、湖畔からのさわやかな風と庭園いっぱいに溢れる光を取り込みます。
    今回4年ぶりとなる「チャペルコンサート」を開催します。春の訪れを感じさせる爽やかで心地良い音色をお楽しみください。
    開催日時 ① 2024年5月11日(土)
    12:00~、14:00~ *各30分
    出演者 ① 藤林貴子(アルパ)、松浦瑠奈(ヴァイオリン)
    開催日時 ② 2024年5月12日(日)
    12:00~、14:00~ *各30分
    出演者 ② Eimyマルタン(ボーカル)、西浦由紀(ピアノ)
  • ロザージュ期間限定スイーツロザージュ期間限定スイーツ

    ロザージュ期間限定スイーツ
    フェア期間中「プレミアムショップ&サロン・ド・テ ロザージュ」では、ツツジの開花に合わせて期間限定デザートが登場します。
    フランス語で「花が咲く」という意味の「フルリール」はツツジの花をイメージして仕上げられ、季節の苺と紅茶の風味が調和した華やかなデザートです。ツツジの香りを思わせるオリジナルブレンドティーを使用したムースやマカロンや苺のアイスクリームが添えられた、春らしい一皿。豊かな食感と華やかな香りをお楽しみください。

    フルリールフルリール

    期間 2024年4月16日(火)~5月31日(金)
    提供 サロン・ド・テ ロザージュ(山のホテル直営デザートレストラン)
    料金 単品 1,800円
    ティーセット 2,600円(ポットサービス)
    ※表示料金は、サービス料・消費税を含むお支払い金額です。
    サロン・ド・テ ロザージュのご案内
  • 川瀬巴水グッズ川瀬巴水グッズ

    川瀬巴水グッズ
    岩崎小彌太男爵は昭和10年、風景版画の第一人者・川瀬巴水(1883-1957)に自慢の別邸庭園を描いてもらいました。巴水は洋風を加味した風景版画で新境地を開いた人物。現在でも葛飾北斎、歌川広重と並び、海外でも高い知名度と人気を誇っています。色とりどりに咲くツツジ、富士山を望むツツジ、雨の別邸庭園など6点の版画を完成させ、男爵が外国からのお客様にお土産として差し上げていたようです。さらに同じ絵で葉書サイズの版画を製作し、絵葉書にもしました。
    この版画の絵葉書を印刷で復刻し、3種類のクリアファイルも本館売店にて販売しております。
    絵葉書 1枚 110円
    6点セット 660円
    クリア
    ファイル
    川瀬巴水「元箱根見山荘風景」芦ノ湖の夕富士
    A5サイズ 330円
    川瀬巴水「元箱根見山荘風景」つつじ庭に遊ぶ二美人
    A5サイズ 330円
    川瀬巴水「元箱根見山荘風景」つつじ庭より富士を見る
    A4サイズ 440円
    ※表示料金は、消費税を含むお支払い金額です。
    川瀬巴水グッズ
    初期摺りの貴重な版画を一部ホテルロビーに展示しております。

無料送迎バスのご案内無料送迎バスのご案内

「つつじ・しゃくなげフェア」ご利用のお客様のために、
「元箱根港~山のホテル」間を無料送迎しております。

場所 元箱根港海賊船乗り場前
時間 9時10分より、約20分間隔で運行。
最終17時10分
無料送迎バスのご案内

日本植物園協会ナショナルコレクション認定ナショナルコレクション認定

2022年「小田急山のホテル 庭園のツツジ」は、江戸時代に作出された他所ではほとんど見られない30の古品種を含む84種類のツツジがあり、周囲の景観とともに次世代に残すべき価値あるコレクションとして、神奈川県内で初めて認定され、翌年2023年には「小田急山のホテル 庭園のシャクナゲ」が「日本植物園協会ナショナルコレクション第15号」に認定されました。シャクナゲ園には、日本に最初に導入された西洋シャクナゲ、ゴーマー・ウォータラーの元株をはじめとして、江戸時代末期から明治時代に海外で作出された貴重な9品種や、環境省の絶滅危惧種に選定されている野生種キョウマルシャクナゲやホソバシャクナゲなど、42種類約300株が保存されています。明治から大正時代に造られた日本で最初のシャクナゲ園であり、種類および庭園的価値も高いことが認定の理由となりました。

ナショナルコレクション認定制度

「ナショナルコレクション認定制度」は、秋篠宮皇嗣殿下が総裁をお務めになる、公益社団法人日本植物園協会が2017年に制定した認定制度。「野生種、栽培種に関わらず、日本で栽培されている文化財、遺伝資源として貴重な植物を守り後世に伝えていく」ことを目的とした植物コレクションの認定、保全制度です。

ナショナルコレクション
詳細はこちら
ナショナルコレクション秋篠宮皇嗣殿下ご臨席の下、2022年5月17日に開催された公益社団法人日本植物園協会第57回大会にて、右の認定証と盾を授与されました。認定証と認定盾は、“小田急 山のホテル”ロビーに展示しています。

庭園のツツジ・シャクナゲ庭園のツツジ・シャクナゲ

  • つつじ園MAP ツツジ園 品種紹介
  • しゃくなげ園MAP シャクナゲ園 品種紹介

山のホテルのツツジ園には、岩崎小彌太男爵別邸時代に植えられたツツジが多く残っています。
近年の品種調査で、84品種存在することが判明し、しかも現在、他では栽培されていないような江戸時代を代表する江戸キリシマ、オオヤマツツジ系、リュウキュウツツジ系など貴重な品種が30種以上含まれていることが分かりました。
また、樹齢100年以上の玉仕立ての大株が多数あり、富士山や芦ノ湖を背景にした造形的にも優れた庭園です。

庭園 イメージ庭園 イメージ

つつじ園MAP
庭園散策MAPはこちら

紫琉球(むらさきりゅうきゅう)

紫琉球(むらさきりゅうきゅう)
紫琉球(むらさきりゅうきゅう)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系
常緑性ツツジ。薄紫、大輪、一重咲き。花弁は上部の3枚の切れ目が浅く、下部の2枚と離れて見える。
ブロッチ(斑点)は濃紫。雄しべは10本で赤紫色、雌しべも赤紫色で雄しべの2倍程度の長さ。がくは大きくて粘る。
江戸時代から近代まで、かつては複数の紫色の品種が区別されていたが、現在は薄紫色大輪のツツジを紫琉球と総称する。
古い庭園に植栽されていることがあるが、園芸的な生産はないと思われる。

白錦(しろにしき)

白錦(しろにしき)
白錦(しろにしき)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
常緑性ツツジ。白滝(しらたき)とも呼ばれる。中輪二重、白色。
がくが不完全に花弁に変化し、縁が不規則に切れ込む桂咲き。株は比較的小型で、玉造りの樹形となる。
本品種名は明治時代後期に現れているため、この頃に命名されたと思われる。
稀に関東地方の歴史的な庭園で栽培される貴重品種で、園芸的な生産もないと思われる。

ゴヨウツツジ

ゴヨウツツジ
ゴヨウツツジ
レンゲツツジ類 野生種

落葉性ツツジ。シロヤシオとも呼ばれる。
岩手県以南の本州太平洋側、四国に分布する落葉低木。
枝先に5枚の葉をつけ、春に下垂する白花を咲かせる。樹齢とともにマツのように変化する樹皮も観賞される。
敬宮愛子内親王のお印であるために話題になり、販売された。夏季冷涼な気候に生育するため、平地で栽培することは困難である。

若鷺(わかさぎ)

若鷺(わかさぎ)
若鷺(わかさぎ)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 キシツツジ系
常緑性ツツジ。大輪一重、薄肌色。春以外にも秋咲きすることが多い。 DNAによる分析でキシツツジの白花であることが明らかになっている。
江戸時代に本品種名は見られないが、明治から大正にかけて各地で販売されていた。現在も栽培され、時に販売される。

峰の松風

峰の松風
峰の松風
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系
常緑性ツツジ。大輪一重で、白地に紅紫色の絞りが入る。絞りの数は少なく白花のように見える花も多いが、どこかに一点ごく小さな紅紫色が入る。
『錦繍枕』(1692年)に「みねの松風」が初出し、「白地にむらさきのすじとび入、さきわけ有。むじの白、むじのむらさきも咲ク、太りん」とある。明治時代以降、各地の種苗会社で販売されていたが、現在は生産されていないと思われる。関東の庭園に稀に植栽される貴重な品種。

難波潟(なにわがた)

難波潟(なにわがた)
難波潟(なにわがた)
ヤマツツジ類園芸品種群 クルメツツジ

常緑性ツツジ。中輪一重、淡丹紅色。花色は縁は濃く、中心に向かって白くなる。明治初期に作出された。

小紫(こむらさき)

小紫(こむらさき)
小紫(こむらさき)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
常緑性ツツジ。中輪一重、光沢のある紅紫。
小紫は、オオヤマツツジ系の紫色品種の総称で、かつては数品種が記録されたが、現在では区別ができなくなった。
各地で栽培されるが、山のホテルには複数の系統があると考えられる。

八重げら

八重げら
八重げら
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 江戸キリシマ
常緑性ツツジ。小輪、がくが花弁化した二重咲きで、‘本霧島’よりも暗い朱赤色。花弁の幅も‘本霧島’よりも広い。
小松春三の「日本産躑躅属ニ就テ(承前)」(植物学雑誌 第32号大正7年)では、きりしまつつじ群(霧島性)を「正きりしま性」(現在の江戸キリシマ)と「久留米つつじ性」に分類し、前者のうち単弁で無地のものを花色が鮮やかな「きりきりしま」と 不鮮明な「けらきりしま」等に細分している。この「けらきりしま」の一重咲きが‘田無げら、であり、そのがくが花弁化したものが八重げら、とされる。

飛鳥川(あすかがわ)

飛鳥川(あすかがわ)
飛鳥川(あすかがわ)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
花は淡紅の地色に濃紅の絞りが入る、一重の中輪。
江戸時代の園芸書『錦繍枕』(1692年)にすでにその名が記されている古い品種で、現在は、ほとんど栽培されていない希少品種。

ヤマツツジ類園芸品種群オオヤマツツジ系

飛鳥川(あすかがわ)

飛鳥川(あすかがわ)
飛鳥川(あすかがわ)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
花は淡紅の地色に濃紅の絞りが入る、一重の中輪。
江戸時代の園芸書『錦繍枕』(1692年)にすでにその名が記されている古い品種で、現在は、ほとんど栽培されていない希少品種。

小紫(こむらさき)

小紫(こむらさき)
小紫(こむらさき)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
常緑性ツツジ。中輪一重、光沢のある紅紫。
小紫は、オオヤマツツジ系の紫色品種の総称で、かつては数品種が記録されたが、現在では区別ができなくなった。
各地で栽培されるが、山のホテルには複数の系統があると考えられる。

白錦(しろにしき)

白錦(しろにしき)
白錦(しろにしき)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
常緑性ツツジ。白滝(しらたき)とも呼ばれる。中輪二重、白色。
がくが不完全に花弁に変化し、縁が不規則に切れ込む桂咲き。株は比較的小型で、玉造りの樹形となる。
本品種名は明治時代後期に現れているため、この頃に命名されたと思われる。
稀に関東地方の歴史的な庭園で栽培される貴重品種で、園芸的な生産もないと思われる。

白鳳殿(はくほうでん)

白鳳殿(はくほうでん)
白鳳殿(はくほうでん)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
花は、白色で、赤紫色の絞りが入る、中輪の二重咲き。ブロッチは黄緑色。雄しべは6〜8本。淡桃色の「鳳凰殿」が変異した品種。
園内には「鳳凰殿」「白鳳殿」「紫鳳殿」の3種がある。明治末期から大正初期に作出されたとされる。オオヤマツツジ系園芸品種は関東周辺の庭園に見られるが、栽培も少ない希少品種。
オオヤマツツジ系園芸品種は、近年の研究から、北海道から九州に分布するヤマツツジと、リュウキュウ系園芸品種の交雑が起源であることが明らかとなっている。

鳳凰殿(ほうおうでん)

鳳凰殿(ほうおうでん)
鳳凰殿(ほうおうでん)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
花は直径4.5cm(内側の花弁)、5cm(外側の花弁)ほどの二重咲き。紅ピンク色の白覆輪(花弁の縁が白色)、ブロッチ(斑点)は濃紅紫色。
「紫鳳殿」「白鳳殿」の親にあたる品種。明治末期から大正初期に作出されたと思われる。歴史的な庭園でまれに栽培されるが、現在は、園芸的な生産はほとんどない希少品種。

紫麾(むらさきざい)

紫麾(むらさきざい)
紫麾(むらさきざい)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 オオヤマツツジ系
花は紅紫色の八重の中輪で華やか。雄しべが不完全に花弁化した八重咲きであるが、花によって花弁の形や数が異なることがある。
「麾」とは、花弁が細長く切れ込む采咲きのことであり、時に細長い花弁も出る。
現在は園芸的な生産はない希少品種。

ヤマツツジ類園芸品種群リュウキュウ系

紫琉球(むらさきりゅうきゅう)

紫琉球(むらさきりゅうきゅう)
紫琉球(むらさきりゅうきゅう)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系
常緑性ツツジ。薄紫、大輪、一重咲き。花弁は上部の3枚の切れ目が浅く、下部の2枚と離れて見える。
ブロッチ(斑点)は濃紫。雄しべはI0本 で赤紫色、雌しべも赤紫色で雄しべの2倍程度の長さ。がくは大きくて粘る。
江戸時代から近代まで、かつては複数の紫色の品種が区別されていたが、現在は薄紫色大輪のツツジを紫琉球と総称する。
古い庭園に植栽されていることがあるが、園芸的な生産はないと思われる。

峰の松風

峰の松風
峰の松風
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系
常緑性ツツジ。大輪一重で、白地に紅紫色の絞りが入る。絞りの数は少なく白花のように見える花も多いが、どこかに一点ごく小さな紅紫色が入る。
『錦繍枕』(1692年)に「みねの松風」が初出し、「白地にむらさきのすじとび入、さきわけ有。むじの白、むじのむらさきも咲ク、太りん」とある。明治時代以降、各地の種苗会社で販売されていたが、現在は生産されていないと思われる。関東の庭園に稀に植栽される貴重な品種。

白琉球(しろりゅうきゅう)

白琉球(しろりゅうきゅう)
白琉球(しろりゅうきゅう)
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系

大輪一重の白い花をつける。ブロッチ(斑点)は薄い黄緑色でほとんど目立たない。花には甘い香りがある。近年のDNA分析により、山陽と山陰から四国、九州に自生するキシツツジの白花であることが明らかになっている。
江戸時代から栽培される白花の代表品種。1819年に中国経由でイギリスに導入され、アザレア(Indian-Belgian Azalea)の交配親として使われた。現在でも公園や庭園に植栽され、各地に古木が残っている。

白妙(しろたえ)

白妙(しろたえ)
白妙(しろたえ)
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系

花は、一重で白の直径6cmほどの大輪。雄しべは9~10本。ブロッチ(斑点)は、黄緑色。
「大紫」の突然変異で桃色花の「曙」が出来て、さらにその突然変異でできたのが、「白妙」。山のホテルの株は、戦後普及した「白妙」よりも花や葉が大きく、古いタイプの「大紫」から出たものだと思われる。

白万葉(しろまんよう)

白万葉(しろまんよう)
白万葉(しろまんよう)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 リュウキュウ系
直径4.5cmほどの中輪の白い花をつける。江戸時代に突然変異で生まれた品種で、花の中から次の花が咲く万葉咲き(八重咲きの一種)。ブロッチ(斑点)は薄い黄緑色。
江戸時代中期のツツジの園芸書に掲載される著名な品種で、琉球万葉、白万重などとも呼ばれていた。
本品種は樹勢が弱いため古木はほとんど残っておらず、非常に貴重である。

ヤマツツジ類園芸品種群クルメツツジ

難波潟(なにわがた)

難波潟(なにわがた)
難波潟(なにわがた)
ヤマツツジ類園芸品種群 クルメツツジ

常緑性ツツジ。中輪一重、淡丹紅色。花色は縁は濃く、中心に向かって白くなる。明治初期に作出された。

麒麟(きりん)

麒麟(きりん)
麒麟(きりん)
ヤマツツジ類園芸品種群 クルメツツジ

常緑性ツツジ。紅ピンク色の小さな二重の花をつける。ブロッチ(斑点)はなく、雄しべは5本。
クルメツツジは、江戸時代末期に久留米藩内で改良された品種群で、小型の鮮やかな色の花を咲かせる品種が多い。「麒麟」は、明治30年代に作出された‘クルメツツジ’を代表する品種で、日本各地で栽培されている。
大正時代1918年に久留米を訪れた植物学者でプラントハンターのE.H.ウイルソンによって選ばれた50品種(ウイルソン50)のひとつで、英名は‘Daybreak’。ウイルソン50は、1919年にアメリカに到着し、その後ヨーロッパをはじめとする世界各地に広まった。

ヤマツツジ類園芸品種群江戸キリシマ

八重げら

八重げら
八重げら
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 江戸キリシマ
常緑性ツツジ。小輪、がくが花弁化した二重咲きで、‘本霧島’よりも暗い朱赤色。花弁の幅も‘本霧島’よりも広い。
小松春三の「日本産躑躅属ニ就テ(承前)」(植物学雑誌 第32号大正7年)では、きりしまつつじ群(霧島性)を「正きりしま性」(現在の江戸キリシマ)と「久留米つつじ性」に分類し、前者のうち単弁で無地のものを花色が鮮やかな「きりきりしま」と 不鮮明な「けらきりしま」等に細分している。この「けらきりしま」の一重咲きが‘田無げら、であり、そのがくが花弁化したものが八重げら、とされる。

本霧島(ほんきりしま)

本霧島(ほんきりしま)
本霧島(ほんきりしま)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 江戸キリシマ
花は小輪一重で、鮮やかな濃い朱赤色。葉は濃緑色で光沢がある。
霧島の名が示すように、霧島山から出たツツジとされる。江戸時代に大阪に渡り、5本に殖やされ、そのうち3本が染井(現在の豊島区駒込付近)の植木屋伊藤伊兵衛の庭に植えられた。江戸では「霧島」と呼ばれ、他に類を見ない真紅の花が評判となり、17世紀後半のツツジブームのきっかけをつくった。その後、全国からさまざまな品種が集められ、江戸から各地にツツジが普及した。現在は「本霧島」と呼ばれる。
また、江戸時代末期から明治時代にヨーロッパに輸出された記録があり、「本霧島」の二重咲き(萼が花弁に変化)の「二順霧島」などはアザレアの品種改良に用いられた。
「霧島」は江戸時代に最も高く評価されたツツジであるが、明治時代以降はクルメツツジの人気により、栽培が激減し、現在は各地にわずかながら古木が残存する希少品種。

紅霧島(べにきりしま)

紅霧島(べにきりしま)
紅霧島(べにきりしま)
ヤマツツジ類園芸品種群 江戸キリシマ

花は一重で、直径3.5cm程度の小輪。ブロッチ(斑点)はほとんど目立たない。鮮やかな桃紅色の花で、他の赤い江戸キリシマ系品種とは容易に区別できる。
園内の園芸品種の中ではいち早く咲き、ツツジ開花を知らせる株。明治期に命名されたと考えられる品種。
現在も園芸的に生産され、庭園樹として時に栽培される。

ヤマツツジ類園芸品種群キシツツジ系

若鷺(わかさぎ)

若鷺(わかさぎ)
若鷺(わかさぎ)
希少品種
ヤマツツジ類園芸品種群 キシツツジ系
常緑性ツツジ。大輪一重、薄肌色。春以外にも秋咲きすることが多い。 DNAによる分析でキシツツジの白花であることが明らかになっている。
江戸時代に本品種名は見られないが、明治から大正にかけて各地で販売されていた。現在も栽培され、時に販売される。

ヤマツツジ類園芸品種群 モチツツジ系

花車(はなぐるま)

花車(はなぐるま)
花車(はなぐるま)
ヤマツツジ類園芸品種群 モチツツジ系

花は、目を引く紅桃色の大輪で、一重で花弁が細い采咲き(個々の花弁が完全に分かれる咲き方)。ブロッチは、濃い紅桃色。
モチツツジの突然変異で生まれたとされ、「錦繍枕」(元禄時代のツツジの専門書)にも挙げられる古い品種。生育おう盛で、園内にはこの品種の大株が多数存在する。

その他

ゴヨウツツジ

ゴヨウツツジ
ゴヨウツツジ
レンゲツツジ類 野生種

落葉性ツツジ。シロヤシオとも呼ばれる。
岩手県以南の本州太平洋側、四国に分布する落葉低木。
枝先に5枚の葉をつけ、春に下垂する白花を咲かせる。樹齢とともにマツのように変化する樹皮も観賞される。
敬宮愛子内親王のお印であるために話題になり、販売された。夏季冷涼な気候に生育するため、平地で栽培することは困難である。

ツツジの年間の手入れツツジの年間の手入れ

  • 美しく咲き終えた株に、お礼肥で栄養補給

    美しく咲き終えた株に、

    お礼肥で栄養補給

    次の年も美しく咲かせるための世話は、開花後、栄養を使い切って消耗したツツジの根元に肥料を与えることから始まります。美しい花を咲かせてくれたツツジへ、お礼の気持ちを込めた「お礼肥」は、社員総出で行います。一株一株、株の周りに20~30ヵ所の穴を掘り、丁寧に施した肥料は、次の花芽を育てる大切な栄養分となります。

  • 剪定も1年で大切な作業。一枝一枝見極めて丈夫な株を作ります

    剪定も1年で大切な作業。

    一枝一枝見極めて丈夫な株を作ります

    6月半ばには刈り込みが行われます。刈り込むと枝分かれしてたくさんの花芽がつき、翌春により多くの花を咲かせます。来年の花芽がつく直前に、スタッフ総動員で、2~3日で一気に行います。また、剪定は1年をとおして、こまめに。枝が込み合っていると風通しが悪くなり、苔やカビがつくなどして、木が弱ってしまうのです。

  • 消毒、殺虫、落ち葉清掃・・・・・・秋冬もお世話は続きます

    消毒、殺虫、落ち葉清掃・・・・・・

    秋冬もお世話は続きます

    株を虫や病気から守るために殺虫・消毒作業や除草も欠かせません。苔やカビはブラシで丁寧にそぎ落としますが、大きな株になると2人で1日かかるほど。秋は落ち葉の除去、冬は雪からの保護が大事な作業になります。積もるような雪が降るときは、何度も降っている最中の雪下ろし。積もったままにしておくと、雪の重みで枝が折れてしまうのです。

山のホテルのシャクナゲ園には、大きく分けて海外のシャクナゲと日本のシャクナゲ、どちらも貴重な品種が植栽されています。中でも交配によって品種改良された、海外の園芸品種が多く、それらのほとんどは、岩崎小彌太男爵別邸時代からのシャクナゲです。日本で最初に輸入された「西洋シャクナゲ」と文献に記されていて、歴史的な価値が非常に高いシャクナゲや、絶滅危惧種に選定されている日本原産のシャクナゲなどがあります。2015年からの品種調査で、当園には約40品種300株の存在が判明しました。
また、シャクナゲではありませんが、別邸時代に植えられたカルミア・ラティフォリアの大株がシャクナゲ園に50株近く育っていて、これは、全国的にも珍しいことです。

庭園 イメージ庭園 イメージ

しゃくなげ園MAP
庭園散策MAPはこちら

キョウマル・シャクナゲ

キョウマル・シャクナゲ
キョウマル・シャクナゲ
希少品種
野生種 日本原産
日本固有種で、長野県、静岡県、愛知県の山地に分布する。ツクシシャクナゲの変種。環境省絶滅危惧Ⅱ類。
葉は幅広く、裏毛は少ない。蕾は濃ピンク紅色だが、咲くと淡ピンクに変化する。花弁は5枚が基本だが、6,7枚も混じる。雄しべの数は花弁枚数の2倍。

ゴーマー・ウォータラー

ゴーマー・ウォータラー
ゴーマー・ウォータラー
希少品種
日本名:大華殿(たいかでん)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は大輪、白色で薄藤色が入り、ブロッチ(斑点)は黄茶色。
イギリスで1900年以前に作出された。日本で現存する株は非常に少ない。
本品種は、岩崎小彌太が日本で初めて導入したシャクナゲのひとつである。

マイケル・ウォータラー

マイケル・ウォータラー
マイケル・ウォータラー
希少品種
日本名:照姫(てるひめ)
園芸品種 西洋シャクナゲ
ヨーロッパなどに自生する野生種ポンティクムの交配種。花は中輪で、色は濃暗紅色、花の奥に暗色のブロッチ(斑点)がある。
現在は園芸的な生産はなく、現存数も少ないため、貴重な品種。イギリスで1865年頃作出された。

ノバ・ゼンブラ

ノバ・ゼンブラ
ノバ・ゼンブラ
希少品種
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は大輪、暗紅赤色で、濃色のブロッチが逆三角形に入る。戦前から戦後にかけての赤色の代表品種で、耐寒性が強い。
現在は生産されていない貴重な品種。オランダ(Koster & Sons)で1902年に作出された。

ステラ・ウォータラー

ステラ・ウォータラー
ステラ・ウォータラー
希少品種
日本名:花競(はなぎそい)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は中輪で、少し紫がかったピンク、ブロッチは濃色で目立つ。
雄しべは白く、花弁より短い、雌しべはほぼ花弁と同じ長さ。葉は濃緑色、長さ15cm、幅4.5cmくらいで、細長く、裏毛が薄く生えている。
商業的な生産はなく、栽培も非常に少ないと思われる貴重な品種。イギリスで1865年以前に作出された。

フォーチュネイ

フォーチュネイ
フォーチュネイ
野生種 中国原産

樹高5m以上になる中国原産のシャクナゲ。
花はピンクで、花弁は7枚、甘い香りがある。葉は細長く、楕円形です。当園には多数植栽されている。

シャクナゲ野生種 日本原産

キョウマル・シャクナゲ

キョウマル・シャクナゲ
キョウマル・シャクナゲ
希少品種
野生種 日本原産
日本固有種で、長野県、静岡県、愛知県の山地に分布する。ツクシシャクナゲの変種。環境省絶滅危惧Ⅱ類。
葉は幅広く、裏毛は少ない。蕾は濃ピンク紅色だが、咲くと淡ピンクに変化する。花弁は5枚が基本だが、6,7枚も混じる。雄しべの数は花弁枚数の2倍。

ヤクシマシャクナゲ

ヤクシマシャクナゲ
ヤクシマシャクナゲ
野生種 日本原産

屋久島の固有種で、葉裏はフェルト状の毛に覆われる。
蕾は濃いピンクだが、開花すると白色になる。葉は小さく、縁が下向きに強く巻く。花弁は5枚、雄しべは10本。

アズマシャクナゲ

アズマシャクナゲ
アズマシャクナゲ
野生種 日本原産

日本固有種で、東北地方、関東地方、中部地方の山地に分布する。花の色は紅紫色で、蕾のうちは色が濃いが、開花するにつれ薄くなる。
花弁は5枚で、雄しべは10本。葉はヤクシマシャクナゲに次いで小さいが、裏毛は赤褐色で密に生えスポンジ状になる。

ホソバシャクナゲ

ホソバシャクナゲ
ホソバシャクナゲ
野生種 日本原産

日本固有種で、静岡県西部と愛知県東部の比較的低い標高の岩場に生える。花は紅紫色で、葉が非常に細長いのが特徴。
日本産のシャクナゲの中では、暑さに強く育てやすい。環境省絶滅危惧Ⅱ類であるが、栽培が容易なため、各地で栽培される。

シャクナゲ野生種 海外原産

フォーチュネイ

フォーチュネイ
フォーチュネイ
野生種 中国原産

樹高5m以上になる中国原産のシャクナゲ。
花はピンクで、花弁は7枚、甘い香りがある。葉は細長く、楕円形です。当園には多数植栽されている。

デコルム・ディアプレペス

デコルム・ディアプレペス
デコルム・ディアプレペス
希少品種
野生種 海外原産
ミャンマー、中国(雲南・四川)に分布。花形と葉形はデコルムに似ているが、全体に大型。花色は白色で、花の中心は暗赤黒色、香りがある。葉は楕円形。

園芸品種 西洋シャクナゲ

ゴーマー・ウォータラー

ゴーマー・ウォータラー
ゴーマー・ウォータラー
希少品種
日本名:大華殿(たいかでん)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は大輪、白色で薄藤色が入り、ブロッチ(斑点)は黄茶色。
イギリスで1900年以前に作出された。日本で現存する株は非常に少ない。
本品種は、岩崎小彌太が日本で初めて導入したシャクナゲのひとつである。

マイケル・ウォータラー

マイケル・ウォータラー
マイケル・ウォータラー
希少品種
日本名:照姫(てるひめ)
園芸品種 西洋シャクナゲ
ヨーロッパなどに自生する野生種ポンティクムの交配種。花は中輪で、色は濃暗紅色、花の奥に暗色のブロッチ(斑点)がある。
現在は園芸的な生産はなく、現存数も少ないため、貴重な品種。イギリスで1865年頃作出された。

ノバ・ゼンブラ

ノバ・ゼンブラ
ノバ・ゼンブラ
希少品種
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は大輪、暗紅赤色で、濃色のブロッチが逆三角形に入る。戦前から戦後にかけての赤色の代表品種で、耐寒性が強い。
現在は生産されていない貴重な品種。オランダ(Koster & Sons)で1902年に作出された。

ステラ・ウォータラー

ステラ・ウォータラー
ステラ・ウォータラー
希少品種
日本名:花競(はなぎそい)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は中輪で、少し紫がかったピンク、ブロッチは濃色で目立つ。雄しべは白く、花弁より短い、雌しべはほぼ花弁と同じ長さ。
葉は濃緑色、長さ15cm、幅4.5cmくらいで、細長く、裏毛が薄く生えている。
商業的な生産はなく、栽培も非常に少ないと思われる貴重な品種。イギリスで1865年以前に作出された。

アーサー・ベッドフォード

アーサー・ベッドフォード
アーサー・ベッドフォード
園芸品種 西洋シャクナゲ

花の地色は薄いラベンダー色で、ブロッチ(斑点)は濃い紫色。5月中下旬と秋の年2回開花する。
ホテルのエントランス前に大株がある。イギリスで1935年以前に作出された。

アール・オブ・アスロン

アール・オブ・アスロン
アール・オブ・アスロン
希少品種
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は、鮮やかな深みを帯びた赤で、ブロッチ(斑点)はない。現在生産はなく、栽培も少ない希少品種。オランダで1933年以前に作出。

ホワイト・スワン

ホワイト・スワン
ホワイト・スワン
園芸品種 西洋シャクナゲ

蕾の時は薄いピンクで、開花すると白色に変化する。花弁は7枚。現在は国内での商業的な生産はないと思われる。1958年にイギリスで作出された。

アンナローズ・ホイットニー

アンナローズ・ホイットニー
アンナローズ・ホイットニー
園芸品種 西洋シャクナゲ

遅咲きの代表的な品種で、花は紅赤色。葉は幅が広く大きく、葉裏にごく薄い毛が生える。各地で栽培され、当園にも大株が多数現存する。
アメリカのホイットニー氏が1954年に作出。

ウイリアム・オースチン

ウイリアム・オースチン
ウイリアム・オースチン
希少品種
日本名:競艶(きょうえん)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は紫紅色で、上部に濃色の斑点(ブロッチ)が目立つ。古い品種で、昭和初期に日本でシャクナゲブームが起きた頃、「競艶」と呼ばれ人気があった。現在生産はなく、栽培も少ない。
イギリスのジョン・ウォータラー氏が1865年ごろに作出。

ウイリアム・キング

ウイリアム・キング
ウイリアム・キング
園芸品種 西洋シャクナゲ

葉は幅広で大きく、花は黄クリーム色の大輪品種。弁先は7つに分かれるため丸く整った花形。近年、鉢植えとして生産販売されるようになった。
ニュージーランドで1958年に作出。

ジョン・ウォルター

ジョン・ウォルター
ジョン・ウォルター
希少品種
日本名:神苑(しんえん)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花色は濃赤で、縁に少々フリルが入る。花の上部にある斑点(ブロッチ)は黒色で、全体に少な目に入る。現在は生産されておらず、栽培も少ない。
イギリスで、1857年以前に作出。

太陽

太陽
太陽
園芸品種 西洋シャクナゲ

花は紅紫色。同じ交配の実生から育成されたさまざまな個体が‘太陽’と呼ばれるため、花や葉の変異が大きいことが知られている。
横浜の箱根屋植木の和田浩一郎氏作出の品種で、暑さ寒さに強く、非常に丈夫で育てやすい。

ダッチェス・オブ・エジンバラ

ダッチェス・オブ・エジンバラ
ダッチェス・オブ・エジンバラ
希少品種
日本名:暁光(ぎょうこう)
園芸品種 西洋シャクナゲ
花は紅ピンクで、花弁の上部と中央は薄色。斑点(ブロッチ)は少ない。古品種であるため、生産はなく、栽培もほとんどされていない。
1881年にイギリスで作出された。

ハロペアナム(ホワイト・パール)

ハロペアナム(ホワイト・パール)
ハロペアナム(ホワイト・パール)
希少品種
日本名:酔翁(すいおう)
園芸品種 西洋シャクナゲ
蕾は濃紅ピンク、咲くとごく淡いピンクに変化。花の斑点(ブロッチ)は濃色で少なく、筒部は濃紅紫。葉は上面の支脈が凹む。
古品種であるため、商業的な生産はなく、栽培も少ない。フランスのアロプ氏が1896年以前に作出した古品種。

ピンク・パール

ピンク・パール
ピンク・パール
園芸品種 西洋シャクナゲ

ピンク色の大輪で、花弁にはフリルが入る。花の斑点(ブロッチ)は大きく、赤茶色であり、花のアクセントとなっている。葉も幅が広く、大きい。
1892年以前にイギリスで作出された。現在も大株の露地植え苗木が販売されている。

ロード・ロバーツ

ロード・ロバーツ
ロード・ロバーツ
希少品種
日本名:緋の扇(ひのおうぎ)
園芸品種 西洋シャクナゲ
日本名がついた古い品種のひとつ。花は暗赤色で、ブロッチは黒色、ひとつひとつが大きい。雄しべは短く、雌しべは長い。葉は大きく幅広で、先は尖る。前年の葉も垂れさがらず、水平から上向きにつく。
1900年にイギリスで作出。

カルミア属野生種

カルミア・ラティフォリア

カルミア・ラティフォリア
カルミア・ラティフォリア
カルミア属 野生種

カルミア属野生種の一種で、シャクナゲ園に植栽されているが、シャクナゲではない。
日本に導入されたのは大正4年ごろとされる。当園には大株が45株あり、戦前に植栽されたものと思われる。このような大株が多数保存されているのは全国的に見ても珍しいと思われる。
別名アメリカシャクナゲとも呼ばれ、初夏に、枝先から散房花序を伸ばし薄桃色の小花を多数付ける。花は、蕾の時はふっくらして金平糖のような形で、開花すると浅い筒状の五角形となる。

山のホテル庭園プロジェクト「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」山のホテル庭園プロジェクト「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」

ツツジ・シャクナゲ画像

庭園のツツジやシャクナゲの中には樹齢100年以上経つ株もあります。山のホテルになってからも、庭園は専任のスタッフたちの手によって丹精されています。
ホテルでは由緒ある庭園の維持・再生を目的に、庭園プロジェクト「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」を2015年より10ヵ年計画で開始しました。

100年後を視野に入れ、ツツジは挿し木で、シャクナゲは接木によって、「男爵のツツジ」のDNAを残すという方法で、“今と変わらぬ庭園を次世代に引き継ぐ”プロジェクトを遂行しながら、ツツジ・シャクナゲを大切に維持管理しています。

ツツジプロジェクト――「男爵のツツジ」を100年先までツツジプロジェクト――「男爵のツツジ」を100年先まで

ツツジプロジェクトでは、現在のツツジが枯れたり弱ったりしたとき、新たに購入した木を植えて今の庭園を維持するのではなく、手間はかかっても、挿し木で「男爵のツツジ」のDNAを残し、その木を植えていくことにしました。協力を仰いだのは、新潟市にある一軒の農園。新潟県はツツジ・シャクナゲの生産量が日本一で、花卉農家も多く、数多くの新品種を作出した歴史もあります。

2015年6月、岩崎小彌太男爵が植えた木の中から小紫、白錦、八重げらなど6品種の枝(穂木)を採取。新潟に送り、挿し木で育ててもらいました。この苗木が30cmほどに成長したので、一部をホテルに戻し、庭園の一角にある圃場に植え、その後さらに育った苗木を庭園に定植しました。この試みは、第2弾、第3弾と続けて行っています。
▲ 庭園に咲く八重げら

▲ 八重げら

  • 穂木採取

    穂木採取

    5月にツツジの花が咲き、1ヵ月後位に行う刈込みの前に、新しく伸び始めた新芽部分、穂先10cmほど(穂木)を採取します。採取する木は、岩崎男爵の別邸時代から植わっている老木たちです。
  • 新潟へ発送

    新潟へ発送

    1株から200本ほど採取した穂木は十分水を吸わせ、品種ごとにビニール袋に入れます。ここに、ポンプで空気をたっぷり入れて、梱包して、翌日届くように新潟に発送します。
  • 挿し木で育成

    挿し木で育成

    穂木は農園のビニールハウスで品種ごとに挿し木をされます。根と新芽が出て、ある程度大きくなると1株ずつ鉢に植え替え、株の先端の芽を剪定し腋芽を吹かせ、株が広がりを出すようにして苗木を大きくしていきます。
  • ホテルの圃場で育成

    ホテルの圃場で育成

    穂木採取から2年が経過し、30cmほどに育った6品種の苗木の一部がホテルに戻ってきました。スタッフによって庭園の圃場に植えられ、現在、大切に育てられています。

シャクナゲプロジェクト――学術的にも貴重な品種のDNAを残すシャクナゲプロジェクト――学術的にも貴重な品種のDNAを残す

ツツジとともに岩崎男爵が愛した花がシャクナゲです。広大なツツジ園の奥の急斜面に位置するシャクナゲ園では、西洋シャクナゲや日本シャクナゲなど約40品種300株が育てられ、ツツジと前後して見頃を迎えます。男爵が留学先のイギリスから取り寄せたシャクナゲは、日本で最初に輸入された西洋シャクナゲといわれ、学術的に大変貴重なものとされています。
ホテルではツツジと同様、シャクナゲも貴重な品種のDNAを残していくことを計画。2015年12月、接木による再生プロジェクトを開始しました。対象となった品種は、男爵がイギリスから輸入したゴーマー・ウォータラーとマイケル・ウォータラーの2種。新潟の農園に10〜15cm長さの穂木を各10本送り、根のついた別のシャクナゲの幹を切って、穂木の切断面と固定することで接木し、育成しています。
2019年には新潟から戻り、ホテルの圃場で大切に育てられています。また、その後も第2期、第3期と新たな品種の再生に着手しています。
▲ ゴーマー・ウォータラー

▲ ゴーマー・ウォータラー

採取

採取

採取した穂木

採取した穂木

接木した鉢

接木した鉢

庭園で採取した穂木は、新潟で別な品種のシャクナゲと、幹の断面同士をあわせて固定し接木します。

品種調査と土壌改良品種調査と土壌改良

岩崎男爵が植えたツツジやシャクナゲの中には、長い年月の間に品種がわからなくなってしまったものがあります。そこで2016年から、開花時にツツジ・シャクナゲの研究者 倉重祐二氏(新潟県立植物園顧問)による品種調査を行っています。調査の結果、ツツジ・シャクナゲともに相当な樹齢の大株が多く、日本では他に栽培例の少ない希少品種が多数栽培されていることもわかりました。
引き続き詳細な調査を実施するとともに、長期的な視野に立った栽培管理として、庭園の土壌改良も年月をかけて順次行っていく予定です。

土壌改良

土壌改良

品種調査

品種調査

庭園プロジェクトで「品種調査」をサポートしてくださるツツジ・シャクナゲ研究者 倉重祐二氏

庭園プロジェクトで「品種調査」をサポートしてくださるツツジ・シャクナゲ研究者 倉重祐二氏

ツツジ・シャクナゲ研究者 倉重祐二氏

プロフィール

神奈川県横浜市生まれ。千葉大学大学院園芸学研究科修了。新潟県立植物園園長を経て、現在は日本植物園協会専務理事。ツツジ属の栽培保全や系統進化、花卉園芸文化史を専門とする。「趣味の園芸」(NHK)に講師として出演。著書に『よくわかる栽培12か月シャクナゲ』(NHK出版)、『日本の野生植物』(共著・平凡社)など。

庭園プロジェクトに携わるホテルスタッフの想い

庭園プロジェクトに携わる
ホテルスタッフの想い

  • 山のホテル支配人 国枝 大輔

    山のホテル 総支配人国枝 大輔

    ツツジ・シャクナゲが咲き誇る庭園は、後世に継承すべき宝です。そして代々の支配人たちの「山のホテルのツツジを守り抜いていく」ことへの誇りを、私も受け継いでいきたいと思います。
  • 施設管理アシスタントマネジャー 大橋 明雄

    施設管理(グリーンアドバイザー)大橋 明雄

    2014年の大雪時、ツツジが雪に埋まっている光景を見て驚愕。ツツジが咲く2週間のお客さまの笑顔を励みに、1年かけて美しい庭園を維持していくことが使命と感じています。